FAO(国連食糧農業機関)の報告書によると、2023年には世界で7億1,300万人~7億5,700 万人が飢餓に直面した可能性があると推定されています。【ⅳ】これは世界で生産されている食糧が不足しているからではありません。生産量で言えば、世界の全人口に十分に分配できるだけの穀物が毎年生産されています。
しかし、それらの穀物のおよそ3分の1が人間ではなく、家畜の飼料になっています。牛などの家畜は早く出荷可能な体重に太らせるために、穀物飼料を大量に食べさせられます。これは飼料から肉への変換効率が極めて悪いためです。少なく見積もった数値でも、牛の体重1kgを増やすのに約7kgの穀物飼料が、豚1kgには約4kg、家禽(鶏など)1kgには約2kgの穀物飼料が必要となります。
また、世界で飢餓に苦しむ人々の8割ほどは、実は余剰食糧のある国に暮らしています。ところが、その余剰食糧は、家畜の飼料に回され、その家畜の肉は先進国の豊かな人間に消費されています。言い換えれば、私たちが肉食をするということは、飢えに苦しむ人々から、間接的に食糧を奪っていることになるのです。
さらに重大なのは、食肉生産には膨大な量の水が必要となることです。例えば、飼料となるトウモロコシを1kg生産するには、かんがい用水としておよそ1800リットルの水が必要です。家畜はこうした飼料を大量に消費しながら育つため、牛肉の場合は1kgを生産するのに、およそ2万600リットルもの水を必要とするのです。『世界水発展報告書』(2023年、国連)によると、世界人口の26%(20億人)は安全に管理された飲料水サービスを利用できないとされています。また過去40年間をみると、世界全体で水使用量は年間約1%ずつ増加していて、人口増加、社会経済発展などにより、2050年まで同様の割合で増加することが予測されています。【ⅴ】このような状況で肉食をするということは、飢餓で苦しむ人々から水も奪い取る結果になるのです。
今日のあなたの選択が未来を変える
「世界の大きな動向を個人は変えられない」とお考えですか? 少し別の視点から考えてみてください。食品の購入・消費は、私たち消費者が自分の思いを生産者に伝える有力な手段です。私たちは、消費を通して生産者に「作り続けてください。私が買い続けますから」と伝えているのです。需要が供給を作り出しているのです。言い換えれば、私たちが肉食をすることで、生産者には「もっと多くの動物を傷つけ、殺して」と頼んでいることになるのです。そしてそれは、飢餓の拡大にもつながっています。
ですから、「動物を苦しめたくない」「飢餓に苦しむ人を増やしたくない」「地球環境を守り、次世代につなげたい」という思いを実現するには、自らの食生活をノーミート、低炭素の食生活に変えること――つまり自分自身が行動することが一番着実で、そんな人々が増えることが最も効果的な方法なのです。それが社会を変え、未来を変えることにつながります。
困っている人に手を差し伸べるように、貧しい国の人々や生物、地球環境などに配慮する食生活を少しずつ始め、または続けていきませんか。それは健康増進だけでなく、きっと自分の心の奥底から喜べる生活になるのです。
【ⅰ】環境省ホームページ「気候変動の科学的知見」(外部リンク)
【ⅱ】独立行政法人 農畜産業振興機構ホームページ「畜産の情報」(外部リンク)
【ⅲ】FAOデータベース「GLEAM 3 Dashboard. In: Shiny Apps.」(外部リンク)
【ⅳ】FAO「The State of Food Security and Nutrition in the World 2024」(外部リンク)
【ⅴ】国連世界水開発報告書2023「partnerships and cooperation for water; executive summary」(外部リンク)